東京ディズニーシー(以下、TDS)には、昨年9月にオープンしたばかりの「タワー・オブ・テラー」という人気アトラクションがあります。いわゆる「絶叫」系に分類されるフリーフォール型のアトラクションですが、ただ落ちるだけではなく、落ちた後に急上昇して再び落ちる動きが特徴でもあります。
私はTDSの年間パスポートを所持していて、暇と交通費さえあればTDSにいつでも入園できるのですが、タワー・オブ・テラーにはつい最近まで乗ったことがありませんでした。理由はただ1つ、私が「絶叫」系のアトラクションを苦手としているからです!!そのため、東京ディズニーランド(以下、TDL)のスペース・マウンテンやビッグサンダー・マウンテンにも、誠に遺憾ながら乗ったことがありません。いや、乗れるものならば乗りたいんです。しかし、怖くて乗れんのです!!
スペース・マウンテンはつい最近リニューアルオープンしたばかりですが、残念ながら私はリニューアル前の状態を存じておりません。何がどう変わったのか、私にはわかりません。悔しいです。しかし、悔しさよりも恐怖感が勝っているのだから、どうしようもないです(涙)。
TDLのトゥーンタウンには「ガジェットのゴーコースター」という乗り物があります。「絶叫」好きの方の中には、あれを「大して怖くないので、子供が乗るもの」と認識されていらっしゃる方がいますが、少なくともその認識は私には当てはまりません。私は「ガジェットのゴーコースター」も、1度乗っただけで苦手になってしまいました。あれ、相当怖くないですか?
そんな私ですが、スプラッシュ・マウンテンはかろうじて大丈夫です。怖いことには変わりないのですが、何とか乗ることができます。どうやら、横に振り回されたりすることなく、ただ落ちるだけだからみたいです。コースター系の乗り物はどうしても遠心力で振り落とされそうな気分になってしまいますが、スプラッシュ・マウンテンにはそれがありません。どうやら私は、回転するときの遠心力を最大の苦手としているようで、落ちるだけのスプラッシュ・マウンテンならば何とか耐えられるみたいなのです(TDSのセンター・オブ・ジ・アースも1度しか乗っていませんが、何とか耐えられましたので)。
それならば、急上昇があるとは言え、基本的には落ちることがメインのタワー・オブ・テラーには乗れるのではないか。タワー・オブ・テラーのオープン当初から、私はそう思っていました。タワー・オブ・テラーを私より先に体験した人からも、「内装が凄い。それだけでも見ておいた方が良い」とか、「センター・オブ・ジ・アースよりは怖くないから、きっと乗れるよ」なんて話を聞いていて、「何とか頑張って乗ってみようかな」という気持ちが徐々に高まってきました。
ただ、どうしても最後の踏ん切りがつかないまま、2007年のゴールデンウィークを迎えてしまいました。私はTDSのビッグバンドビートをよく鑑賞するのですが、その待ち列に並びながらタワー・オブ・テラーの建物を見る度、「今日あたり乗っておこうかな。いや、でも怖いな。混んでるみたいだし、今日はやめて、また今度にしておこうかな。いやしかし、そんなこと言っていたら、いつまで経っても乗らないぞ」などと逡巡していたのです。
しかし、4/28(土)にTDSに行ったとき、ついにタワー・オブ・テラーに乗りました。「ゴールデンウィークだから、きっと物凄い混んでるだろうな」と覚悟してTDSに行ったところ、拍子抜けするぐらいに空いていて、タワー・オブ・テラーは何と25分待ち。びっくりしました。その状況で、私はついに決意したのです。「ゴールデンウィークにこんなに空いているなんて、ありえない。こんなありえない状況が発生したのは、『今日こそタワー・オブ・テラーに乗りなさい』という、ウォルト・ディズニーの思し召しに違いない!!」とポジティブに判断し、ついに乗ることを決意したのです。
そして、不安な気持ちは拭い去れないものの、ウォルトの思し召しだと信じて、25分待ちの列に果敢に並びました。ホテル・ハイタワー(タワー・オブ・テラーの建物)の内装は、噂に違わず素晴らしい。しかし、さすがに25分待ち。内装をゆっくりじっくり見る時間もなく、すぐにエレベーターの前にたどり着いてしまいました。いやしかし、もっと待ち時間が長かったら、次第に高まってくる恐怖心に耐えられなかったかもしれませんので、待ち時間が短くて良かったのかもしれません。ちなみに、待っている間は万一に備えて、必死に辞世の句を作ることに余念がありませんでした(←半分冗談ですが)。
呪いの偶像であらせられるシリキ・ウトゥンドゥさんとも、初めてのご対面。噂には聞いておりましたが、いや~本当に悪そうなお顔でいらっしゃいますね。目を緑に光らせたり、姿を消したりしてゲストをびっくりさせておりましたが、私はその程度のことでは驚いたりはしません。「エレベーターが落ちることよりも、シリキさんをはじめとして全体的にホラーな雰囲気が怖い」と言う方もいますが、私はその逆。ホラーな雰囲気は大丈夫ですが、シリキさんとご対面したことで、「落ちる」恐怖が間近に迫っていることを感じ、緊張感が高まってきたのです。
そしてついに、エレベーターに乗り込みました。もう逃げられません。「本当に自分の決断は正しかったのだろうか」と、最後の自問自答をしてみますが、答えは出ません。そうこうしているうちに、エレベーターは動き出してしまいました。しかし私には、「恐怖に悶え苦しむだけでなく、何かをやってやろう」という作戦がありました。
その作戦とは、「絶叫」系アトラクションには付き物の、アトラクション内の記念撮影用カメラに向けて、TDSで絶賛公演中のプリマヴェーラにおける、「お花に止まったチョウチョ」のポーズで写真に写ってやろう!!という作戦です。
「絶叫」が苦手で恐怖心の塊のはずの私が何故、そんなことをやろうと思ったか。それは、タワー・オブ・テラーのカメラ撮影が、「エレベーターが最上階に着いて、急降下する直前」だと聞いたからです。そうです、落ちる前ならば、かろうじて「お花に止まったチョウチョ」のポーズもできるのではないか!!そう思ったのです。
実は私は、TDSのインディジョーンズ内部のカメラに向かって、TDSのスペシャル・イベントに関連するポーズをカメラ目線で披露して撮影されるのを趣味としております(インディジョーンズは怖くないのです)。「お花に止まったチョウチョ」のポーズは、すでにインディジョーンズにおいて完璧なカメラ目線での撮影に成功していたので、今回もやってみたかったのです。
そして、その作戦は成功しました。エレベーターが最上階に到着し、写真が撮影された瞬間、私は「お花に止まったチョウチョ」のポーズで写ることができたのです。その直後、急降下!!この後は、本当に恐怖の時間でした。
何だか、何度も落ちたり上がったりを繰り返していたような気がします。急上昇は思ったほど怖くありませんでしたが、急降下は怖かったです。とりあえず、叫んでみました。泣きそうなぐらい怖くて、その気持ちを叫ぶことで発散させようと思ったのです、多分。そして、隣に乗っていた同行者にしがみついてみました。とにかく、何かにつかまりたかったのです。イスにつかまっているだけでは不足でした。
「君たちは助かった」。ハイタワー三世氏のそんな声が聞こえてきて、自分が無事に生還できたことを知りました。朦朧とした意識の中で、撮影された写真を見てみました。確かに、私はプリマヴェーラの「お花に止まったチョウチョ」のポーズをカメラ目線で成功させていましたが、顔が完全に引きつっていました。どうやら、撮影直後に落ちる恐怖感に苛まれていて、それが顔に出てしまったようです。これはちょっと悔しいです。
さて、恐怖のタワー・オブ・テラーでしたが、ウソ偽りなく、本当に怖かったです。あんな怖い乗り物に一日に何度も乗っていたら、身が持ちません。いや、それ以前に、精神的に参りそうです。
しかしながら、私の胸をよぎる満足感・充実感・爽快感は何でしょうか?人気アトラクションにまがりなりにも乗ることができたからでしょうか?それとも、あまりに怖かったためにおかしくなってしまったのでしょうか?実際のところ、よくわかりません。
しかし、私が「絶叫」系の乗り物に乗って絶叫したのは、初めてのことです。そのことに新鮮な感動を覚えたのは間違いありません。隣に乗っていた同行者にしがみついたのも、初めての経験です。それは怖かったからではありますが、初めてづくしで何だか楽しかったような気もします。
もしかしたら私は、知らず知らずのうちに恐怖感を楽しんでいたのかもしれません。恐怖感が先立ってしまい、なかなか乗る決断をすることができなかったタワー・オブ・テラーは、実際に乗ってみたところ本当に怖かったわけですが、その恐怖を私は楽しんでいたのかもしれません。シリキ・ウトゥンドゥが私にかけた呪いは、もしかしてエレベーターが急降下・急上昇したことではなく、恐怖感を楽しむ心だったのでしょうか。そうだとすれば、シリキさんが私に呪いをかけなければ、私は恐怖を味わうだけに終わった可能性もあります。
でも、本当にそうなのか、私にはまだわかりません。自分が味わった満足感や爽快感の正体も、はっきりとはわかりません。それは、シリキ・ウトゥンドゥとは一体何だったのかという疑問にも繋がります。しかしながら、タワー・オブ・テラーを楽しむ人が何故多いのか、その秘密は自ら体験することでわかったような気がします。
私は決して、「絶叫」を克服したわけではありません。次にいつタワー・オブ・テラーに乗るか、それはわかりません。もしかしたら、二度と乗らないかもしれません。やっぱり、怖かったのは確かだからです。しかし、まがりなりにも一度乗ったことで味わった満足感・充実感・爽快感は、恐らく一生忘れないと思います。こんな気持ちは、そうそう抱くことはありません。
一生忘れることがないであろう感慨を得られたからには、やっぱり乗ってよかったのだと思います。「絶叫」が元々好きな人ならば、私のような大袈裟な感慨を得ることはないでしょう。「絶叫」が苦手ゆえに得ることができた感慨だと思っています。
「一生忘れることがない」感慨を感じているのは、やっぱりシリキさんの呪いなのではないかと疑ってしまいます。呪われていなければ、恐怖心以外には何も感じなかっただろうからです。そうであるならば、素敵な呪いですね。この文章を書きながら、まだ自分の気持ちの整理がついていないのですが、最後にこれだけは言っておきたいです。シリキさん、ありがとう!!
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