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2007年12月21日 (金)

湯浅五郎兵衛と幕末維新

青山忠正監修『湯浅五郎兵と幕末維新』(日吉町郷土資料館、2005年)という図録があります。京都府にある日吉町郷土資料館が、2004年に開催した企画展「湯浅五郎兵衛と幕末維新」の、展示解説図録です。池田屋事件で死んだ北添佶麿や、天誅組を結成した吉村寅太郎、あるいは佐久間象山を暗殺したことで知られる河上彦斎、神風連の乱の中心的人物だった加屋栄太らが湯浅五郎兵衛に宛てて書いた書簡などが掲載されています。

もっとも、湯浅五郎兵衛という人を、よく知らない人は少なくないはず。私も、この図録を読むまで、湯浅五郎兵衛の事績について、ほとんど知りませんでした。五郎兵衛は丹波国船井郡に生まれた郷士で、五郎兵衛が政治活動を始める事になるきっかけは、湯浅家が肥後細川家と血縁関係があったことにあるようです。肥後出身の志士・松田重助(後、池田屋事件で新選組に斬殺される)の訪問を受けたことによって、五郎兵衛は肥後藩の勤王党のメンバーと交流を持ちながら政治活動を始めたらしいです。

新選組による池田屋事件襲撃の前、古高俊太郎という志士が新選組に捕縛され、それが池田屋事件につながっていったことはよく知られていますが、古高が養子として継いだ枡屋という商家は、湯浅五郎兵衛家の分家でした。新選組に捕縛された頃の古高俊太郎は湯浅喜衛門と名乗っていて、もちろん五郎兵衛とも交流があります。枡屋には池田屋事件の災難に遭う志士たちが多数出入していて、五郎兵衛もそれによって交友関係を広げて政治活動の幅を広げていたようです。

五郎兵衛は当初、天誅組にも参加する予定だったらしく、また、公家の鷲尾隆聚邸に潜伏して政治活動を行っていたこともあるようです。もちろん、新選組に狙われたこともあります。最初は肥後藩勤王党の意に沿うような形で政治活動を始めた湯浅も、段々と活動の幅を広げて、特に長州藩との関係も深めたようです。一説によると、薩長同盟の周旋に向けて尽力し、木戸孝允が西郷隆盛ら薩摩藩代表との会談のため上京した際には同行したとか。

明治元年には河上彦斎と共に、肥後藩の「外向御用懸京地詰」に就任し、明治2年には岩倉具視の附属として、京坂地域での情報収集を行っていたとか。死後、従五位を贈られています。

ともかく、湯浅五郎兵衛はあまり知られていない志士の1人ですが、よく知られている志士たちと交わりつつ、なかなか興味深い政治活動を行っていたようです。史料不足のため、五郎兵衛がどのような考えで幕末政局に臨んでいたのか、はっきりわからない部分が多いようですが、その解明に少なからず寄与しそうな資料が、図録『湯浅五郎兵と幕末維新』に掲載されているのです。掲載されている資料の解説は笹部昌利氏と平良聡弘氏が担当されています。

ちなみに、『湯浅五郎兵と幕末維新』には面白いコラムと、「特集史論」と題された論稿が掲載されています。まず、掲載されているコラムは以下の通り。

Ⅰ 辻ミチ子「おんな勤王家-若江薫子の生涯-」
Ⅱ 笹部昌利「「志」の背景-一領具足から土佐勤王党へ-」
Ⅲ 平良聡弘「明治の義挙と敬神党」
Ⅳ 笹部昌利「贈位のゆくえ-ある志士の顕彰運動と近代日本-」

辻ミチ子氏は『女たちの幕末京都』(中公新書、2003年)の著者。Ⅰは湯浅五兵衛とも交流があり、明治天皇の皇后となる寿栄姫の侍読を務めていた若江薫子についてのコラム。Ⅱは武市半平太や吉村寅太郎ら土佐勤王党出身者について。Ⅲは神風連の乱で知られる敬神党について。Ⅳは天誅組に参加していた松本奎堂について。

一方、「特集史論」は3つ掲載されていて、どれも読み応えのある論稿になっています。「特集史論」として掲載されている論稿は以下の通り。

1 青山忠正「草莽の明治維新―志士と攘夷論」
2 笹部昌利「志士と由緒―丹波郷士湯浅五郎兵衛と幕末政治をつなぐもの」
3 平良聡弘「明治初年における志士の政治活動―丹波郷士湯浅五郎兵衛の「御一新」」

青山忠正氏はここで紹介している図録の監修者で、『明治維新と国家形成』(吉川弘文館)などの著書がある幕末政治史研究者です。どの論稿も面白い内容が含まれていて、読んで損はありません。

図録『湯浅五郎兵と幕末維新』は掲載されている史料も、論稿も、どれも面白いので、幕末政治史や、いわゆる「勤王の志士」に興味のある方にオススメしたい図録です。日吉町郷土資料館では通信販売も行っているようなので、購入しやすい図録と言えそうです。

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