幕末維新期の農民日記と新選組
赤報隊をはじめとして、草莽諸隊や草莽の志士の研究で著名な維新史研究者・高木俊輔氏は、近年は農民が書き記した日記を研究素材にして、幕末維新期の農民生活史を描くことに取り組んでおられます。
例えば昨年に限って言えば、高木氏は、「幕末維新期農民日記にみる地域情報‐『大黒屋日記』の諸家関係記事について ‐」(『立正大学文学部論叢』123号)という、農民日記を研究素材にした論文を発表しています。
近年の高木氏はそのほかにも、色々な農民日記を研究素材にしています。その1つに、「富沢家日記」の分析があります。富沢家は武蔵野国多摩郡連光寺村において、名主を務めていた家です。
「富沢家日記」は天保14(1843)年から明治41(1908)年までの分が現存していて、国文学研究資料館に所蔵されています(閲覧可能です)。そのうち、安政7(1860)年~明治2(1869)年の分は翻刻されて、国文学研究資料館史料館編『史料叢書5 農民の日記』(名著出版、2001年)として刊行されています。その解説を書いているのが、高木俊輔氏です。
また、高木氏にはほかに、「幕末維新期の日記史料研究‐武蔵野国多摩郡連光寺村『富沢家日記』の場合‐」(『立正大学文学部研究紀要』20号、2004年)という論文もあります。タイトルどおり、「富沢家日記」を研究素材にした論文で、「在地に生きた、ごく普通の、どこの村でも見かけたような農民の手になる日記から、民衆生活史を組み立てること」を目的に書かれたものです(色文字部分は高木氏の論文からの引用)。
高木氏は同論文で、多摩地方の農民の手になる日記はたくさん現存していることを指摘し、2004年時点ですでに活字化されている多摩地方の農民日記22点を、表にまとめてくれています(例えば『小島日記』や比留間七十郎の日記など)。多摩地方の農民日記に興味のある人には、とても便利です。
これは私の興味関心によるところが大きいのですが、高木氏が取り上げた「富沢家日記」ほか多摩地方の日記は、新選組を知る上でも役立つものが多いはずです。高木氏も、「幕末期多摩地方の動向としては、新選組関係の情報を欠落させる訳にはいかない」と指摘しています。
もちろん「富沢家日記」にも、新選組情報は登場します。例えば、慶応4年3月6日条には、「新選組近藤勢、甲州警固に差向候処、間に合兼、途中に罷在候由」と記されています。
「富沢家日記」には新選組以外にも、戊辰戦争時の彰義隊の動向などが記されています。新選組や戊辰戦争に興味がある方には、「富沢家日記」をはじめとした多摩地方の農民日記が、有意義な情報を提供してくれそうです。
そのような「富沢家日記」や、そのほか幕末維新期の農民日記を研究している研究者として、高木俊輔氏がいるということを改めて紹介しておきます。著書として刊行されている研究成果には、『「夜明け前の世界」‐「大黒屋日記」を読む‐』(平凡社、1998年)があります。
ちなみに、国立情報学研究所(CiNii)のコチラのページから、高木氏の論文「幕末維新期の日記史料研究‐武蔵野国多摩郡連光寺村『富沢家日記』の場合‐」がPDFで閲覧可能です。興味のある方はご参照ください。
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コメント
実は先月よりこの富沢家史料を集中的に収集しています。
来月、立川へ移転するため、しばらくは国文学研究所収集史料は見れないことからですが、精査するだけで面白い史料はざくざくあります。
例として挙げれば近藤周助の借用証や土方隼人家の史料等です。
これらから集めた史料をもとに特定した箇所を含めた史跡めぐりを企画中です。
投稿 あさくらゆう | 2007年9月21日 (金) 07時32分
>あさくらゆうさん
コメント、ありがとうございます。
あさくらさんが富沢家史料を収集しているということは、ちょうどタイムリーな話題でしたね。
近藤周助の借用証や土方隼人家の史料などは、面白そうですね。まだまだ、あまり紹介されていない史料も多いのでしょうね。それらを活用してのご研究に、期待しております。
投稿 パルティアホースカラー | 2007年9月22日 (土) 07時16分