図録『龍馬の翔けた時代』
一昨年の2005年は、坂本龍馬の生誕170周年ということで、京都国立博物館で「龍馬の翔けた時代‐その生涯と激動の幕末‐」という特別展覧会が開催されました。私は残念ながら見に行けませんでしたが、後で図録だけは購入しました。京都国立博物館編『龍馬の翔けた時代‐その生涯と激動の幕末‐』(京都新聞社、2005年)という図録です。
この図録、豊富な文献史料や絵画・写真資料などを多数カラー写真で掲載していて、非常に良いです。できれば実際に見に行きたかったのは言うまでもありませんが、図録だけでも購入して良かったと思わせてくれる内容です。それだけに、井上勝生『幕末・維新』(岩波新書、2006年)でも、参考文献として使用されています。
図録に掲載されている資料類(=展示されていた資料類)には、現存している坂本龍馬書簡の約半数や、河田小龍の『漂巽紀略』、『坂本家先祖書並系図』、『小栗流和兵法三箇条』、安政4年8月17日付の島村源次郎宛武市半平太書簡、『坂本八平訓戒書』、『井口家アルバム』、『三吉慎蔵日記抄録』、『新政府綱領八策』、『大政奉還建白書写』、『梅椿図』、永倉新八『浪士文久報国記事』、『馬関戦争図』、『近世珍話』、『北亜墨利加合衆国 水師提督ペルリ之肖像』、『ペリー浦賀来航図』、『海援隊約規』、『九州小倉合戦図』、『幕末風俗図巻』、『内裏図』などがあって、実に多彩。
龍馬本人や、龍馬と直接交流のあった人物が書いたものだけでなく、広く幕末という時代全体を理解する上で貴重な資料類が掲載されているのが、この図録の特徴と言えそうです。個人が所蔵している資料以外は、きちんと所蔵先を明記してあって便利ですし。
龍馬の書簡そのものは、平尾道雄監修・宮地佐一郎編集『坂本龍馬全集』(光風社、1978年)や宮地佐一郎『龍馬の手紙』(講談社学術文庫、2003年)に、そのほとんどが写真版で収録されていはいますが、モノクロ写真でした。『龍馬の翔けた時代』展図録はカラー写真で掲載しているので、少しお得な感じがします。ただし、収録書簡の数だけなら『坂本龍馬全集』や『龍馬の手紙』の方が多いですが。
また、この図録には四つの論考が収録されています。青山忠正「文久・元治年間の政局と龍馬」、宮川禎一「坂本龍馬の生涯と書簡」、三浦夏樹「土佐と坂本龍馬」、古城春樹「下関と坂本龍馬」の四つです。
個人的に、特に興味深く読めたのが、青山忠正氏の論考。青山氏は『明治維新と国家形成』(吉川弘文館、2000年)や『明治維新の言語と史料』(清文堂出版、2006年)などの著書がある、明治維新政治史研究者であるだけに、龍馬の活動と文久・元治年間の政局の関係を興味深く論じています。
青山氏は、坂本龍馬の事績として知られている事件・出来事について、「伝説化」されたものが少なくないことを強く主張されている研究者。つまり、真実とは異なる「伝説化」された部分を取り除いたとき、どのような坂本龍馬の人物像が描けるのかを探求されていて、『龍馬の翔けた時代』展図録に掲載された論考も、その一環と捉えることができそうです。興味深く読むことができました。
図録は今でも、京都国立博物館のミュージアムショップ(便利堂)に問い合わせることで、購入できるみたいです。また、古書店にも少し出回っています。
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