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2006年1月 8日 (日)

村井章介『中世日本の内と外』

この記事では、村井章介『中世日本の内と外』(ちくまプリマーブックス、1999年)を紹介します。最初に著者について紹介すると、村井章介氏は東京大学教授で、その他の著書に『日本の中世12 分裂する王権と社会』(中央公論新社、2003年)・『海から見た戦国日本』(ちくま新書、1997年)・『アジアのなかの中世日本』(校倉書房、1988年)などがあります。

では、『中世日本の内と外』の内容の紹介に移ります。本書では、中世の日本の内/外の独特な関係のあり方を考察しています。村井氏によれば、前近代の内/外は、まったく性格を異にする空間としてはっきりと分けられるものではなく、空間の連鎖として存在していて、その意味で、独特な関係と言えるとのことです。

本書では、そういったことを考える上で、日本の中世を通説よりも広くとり、9世紀から17世紀前半までと定義していることが大きな特徴と言えます。さらに、「内」と「外」とを比べる「比較史」の視点を用いて話が進み、朝鮮や中国などとの関係から中世日本の歩みを意味づけることを最終の目標としています。そのために、元寇など具体的な歴史を追っていきながら考察を加えています。

そして、本書によれば、「中世日本の内と外」というテーマに即して考えると、内/外の区別が絶対的ではないことが明らかになり、現代の日本を取り巻く内/外の関係のあり方との共通性が見えてきます。さらに、中世日本の内/外の関係を考えることにより、現代の世界をも考えることになり、その過程で「ボーダーレス」という言葉がキーワードとして導き出されます。本書の内容を大雑把にまとめると、以上のようになります。

本書の長所としては、誰にでも読みやすいような平易な語り口で叙述されていることが、まず第一に挙げられます。本を開いた瞬間、難しそうな印象を読み手にあまり与えないような配慮がなされているのです。史料の引用もできるだけ読みやすくしようという意図が窺えます。

また、「通説」というものに対する著者なりの反論・反対意見が色々と述べられているため、刺激に満ちていて面白いです。「通説」に対して色々と反論していることで、中世史に詳しくない人にとって難解な内容になっているかと言えば、必ずしもそんなことはありません。詳しい説明や解説もしっかりなされているため、中世史に詳しくない人にも内容を理解しやすいです。読みやすいように書かれているだけでなく、読み手の理解を助けるための説明がしっかりされているところが、本書のとても良いところだと感じます。興味深い歴史的事実についても色々と書かれていて、それらの中には、高校の日本史の教科書などでは決して扱われないような知識も多く含まれているので、とても新鮮に感じられますし、楽しく読めます。

そして、最大の長所は、一貫している著者の視点です。具体的には、日本史上の出来事を世界史的連関の中で捉えようとする視点であり、一国史的視野の狭さを打破しています。例えば、「ユーラシア規模で見れば、元寇などとるにたりない小事件でしかなかったともいえる」(98~99ページ)という記述は、どちらかと言えば一国史的視野の狭さを克服できていない私にとって、衝撃的でした。確かにそうかもしれないと、思わず納得してしまいました。村井氏のような世界史的視点は、「中世日本の内と外」というテーマを考えるとき、とても重要な気がします。現代の社会について考えるときも、そのような視点は必要でしょう。それが、本書の最大の長所だと感じています。

逆に、欠点というほどのことではないのですが、日本の中世を通説よりも広く定義したことの意味が、私にはわかりにくかったです(方法自体は有意義だと思いますが)。恐らくは、そうした方が日本の前近代の内/外の関係を考える上で都合が良かったからでしょう。また、通説の中世よりも長い期間で見た方が、日本の内/外の問題を考える上で有益な出来事や事件が多かったからかもしれません。しかし、いずれにしても、日本の中世を通説よりも広く定義した理由について村井氏ははっきりと述べられていないため、推測にとどまります。本書では、9世紀などの通説では中世と定義されていない時代の出来事についても、中世の出来事として扱われているため、通説の時代区分のままの意識で読んでいると、とても紛らわしいです。その意味でも、中世を通説と異なる定義付けを行う理由を明記してほしかったです。誤解を避ける意味で繰り返しておきますが、私は理由を明記してほしかっただけで、方法自体は有意義だと思います。

また、その他の短所としては、著者自身も本書の中で述べていますが、中世の一番最後として定義した17世紀前半に関する記述が少ないです。これは紙数の関係などから仕方ないことなのかもしれませんが、わざわざ日本の中世を通説よりも広く定義したのですから、しっかり最後まで記述してほしかったというのが、率直な意見です。しかし、その欠点を補うための別の著作(前掲『海から見た戦国日本』)を本文中で紹介しているので、その点では大した短所ではないのかもしれません。

さて、全体としての評価ですが、まずはやはり読みやすいように書かれていることに好感がもてます。また、中世の時代区分に関する定義付けは、通説とは異なる意識で読まないと紛らわしい場面もありますが、日本の内/外の関係を詳しく考察する上で、中世を通説より広く定義したことは有効な方法だったと言っていいと思います。何よりも、著者の村井氏が世界史的視野から日本の中世を考えたことはとても重要だと思いますし、そのことが本書の内容をより充実させ、面白くしています。さらに、中世のことだけでなく、現代のことまで考察していることが興味深く、最初から最後まで、色々と考えさせてくれる本です。

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受信: 2006年2月 1日 (水) 13時24分

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