中岡慎太郎研究の基礎的文献
海援隊を結成した坂本龍馬に対して、陸援隊を結成した中岡慎太郎の知名度は低いと思われます。歴史学の世界でも、龍馬の研究に比べて慎太郎の研究は少ないのが現状です。しかし、ひょんなことから中岡慎太郎に興味を抱いた人が、「私が中岡慎太郎研究に、新たな地平を築くのだ!!」と、意気込まないとも限らないでしょう。そんな意気込みを抱きつつも、「中岡を研究する上で、どんな本を読めばいいのかわからない」という人のために、お節介な私が、中岡に関する基本的な文献を紹介しようと思うのです。
まず、歴史学の研究においては、研究対象が何であれ、史料を読まずに行うことは不可能です。別に、私は史料至上主義者ではありませんが、史料を全く使わない研究というのは、さすがに考えることが不可能です。で、中岡慎太郎を研究する上で最も便利なのが以下の史料集。
宮地佐一郎編『中岡慎太郎全集』(勁草書房、1991年)
この全集の中に、中岡が書いた書簡はすべて収録され、編者の読み下し文と合わせて、原本も写真版で掲載されています。原本が写真で載っているということは、編者の誤読や誤植に煩わされる心配がないということです。また、中岡の日記や論策「時勢論」など、中岡に関連する史料のほとんどを網羅しています。中岡を研究する上で、この全集は手放せないでしょう。
次に、中岡の評伝を紹介します。その原典とも言うべき最初のものは、尾崎卓爾『中岡慎太郎先生』(陽明社、1927年)。
それを受け継いだ研究として、土佐藩研究の第一人者と呼ばれていた故・平尾道雄氏の以下の著書があります。
平尾道雄『中岡慎太郎 陸援隊始末記』(中公文庫、1977年)
平尾氏の研究は今なお、中岡の評伝の最高峰と言えるでしょう。姉妹編の『坂本龍馬 海援隊始末記』(中公文庫、1976年)も、一緒にチェックしておきたいところです。さらに、『中岡慎太郎全集』の編者である宮地佐一郎氏にも、『中岡慎太郎』(PHP研究所、1992年)と『中岡慎太郎』(中公新書、1993年)の二冊の著書があります。ちなみに以上の中で、最も研究に役立つであろう本は、平尾道雄『陸援隊始末記』でしょう。
次は、中岡慎太郎について書かれた学術論文です。と言っても、中岡をメインに扱った学術論文は少なく、私が知っているものは、大学院生が執筆した以下の論文だけです。
亀尾美香「中岡慎太郎の討幕思想と周旋活動-慶応二年一月以降を中心として-」(中央大学『大学院研究年報 文学研究科篇』29号、2000年)
中岡を比較的大きく扱っている論文としては、『坂本龍馬』(中公新書、1965年)などの著書がある歴史家・池田敬正氏の以下の論文があります。
池田敬正「土佐藩における討幕運動の展開」(三宅紹宣編『幕末維新論集④ 幕末の変動と諸藩』吉川弘文館、2001年)
そのほかにも、もしかしたら『土佐史談』などの雑誌に中岡関連の論文があるかもしれませんが、未調査です。
そのほかには、マリアス・ジャンセン『坂本龍馬と明治維新』(時事通信社、1965年)。この本には、中岡に関して比較的多くのページが割いてあります。講演を文章化したものですが、歴史家の故・井上清氏の「明治維新と中岡慎太郎-坂本龍馬とくらべて-」(『井上清史論集1 明治維新』岩波現代文庫、2003年)というものもあります。
そして、書き忘れるところでしたが、中岡に限らず坂本龍馬や武市瑞山など土佐出身の志士を研究する上で、瑞山会編『維新土佐勤王史』(冨山房、1912年。最も最近の復刻として、マツノ書店、2004年)の参照は欠かせません。
ちなみに、『中岡慎太郎全集』の編者・宮地佐一郎氏が今年亡くなったことを、私はつい最近、右記のブログを拝見して知りました。→久坂玄瑞と高杉晋作~on the way~ゆうゆう日記。私、情報が遅すぎますね。
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コメント
大変ご無沙汰しております!小林哲也です。バルティアホースカラーさんのページは相変わらず毎回楽しく、刺激を受けながら、読まさせて頂いております。
中岡慎太郎の基礎文献紹介ありがとうございます。
中岡慎太郎の思想は非常に重要ですよね。幕末期の土佐と中央政局の関係を説き明かす上で重要なキーポイントになるというか・・・。
『中岡慎太郎全集』も非常に素晴らしい作品だと思います。
上に挙げた文献以外にも、松岡司『中岡慎太郎伝』、前田年雄『中岡慎太郎読本』などはいかがでしょうか?
個人的なことになりますが、自分には師匠と決めた方が4人いらっしゃいます。
宮地佐一郎氏・坂本龍馬前記念館長・小椋克己氏・松尾正人氏・家近良樹氏です。
個人的なことをすみません。
久しぶりに宮地氏の名前を見たので嬉しさで長くなってしまいました。
またコメントします。
また、よろしくお願いいたします!!!
投稿 小林哲也 | 2008年2月10日 (日) 18時31分
>小林哲也さん
お久しぶりのコメント、ありがとうございます。
この記事を書いた時点では、松岡司『中岡慎太郎伝』と前田年雄『中岡慎太郎読本』の2冊は未読だったため、
ここには書いておりませんでした。
その後作った、このブログとは別のサイトの、
「中岡慎太郎についての主な研究文献」というコーナーでは、両著ともしっかりリストに加えています。
下記のHPです。
http://tosatoad.web.fc2.com/nakaoka.html
自分の中での「師匠」の存在というのは重要ですよね。
師匠を超えられるよう、ぜひ頑張ってください。
投稿 パルティアホースカラー | 2008年2月10日 (日) 18時43分
チェックしました!ありがとうございます。
投稿 小林哲也 | 2008年2月10日 (日) 19時23分
どういたしまして!!
投稿 パルティアホースカラー | 2008年2月10日 (日) 21時20分